■TRPG四方山話 「俺はマスターシーフだぜ!?」

 
シーフ「部屋を歩いてみよう」
 部屋の中ほどで罠に引っかかり、即死するシーフ。
シーフ「俺は部屋を歩くって言ったか? 部屋に忍び込むってことだぞ」
DM「なんで忍び込むって先に言わないんだ?」
シーフ「そこまで言う必要ないだろ。俺はシーフだからどこに行くにも忍び込んでいくんだよ」
DM「そんな事はないだろ。日光の下では、こそこそ忍び込む事はないだろ。教会にも忍び込んでいくのか?」
シーフ「いいや。けど危険地帯では慎重に忍び込んでいくぜ」
DM「ああ。けど、キミはその部屋に罠があると知らなかった。そしてそこが危険な場所である事も知らなかった。だろ?」
シーフ「なあ、俺くらいのレベルのシーフが、罠が仕掛けられている可能性のある部屋にノコノコと入っていくわけないだろ」
DM「入っていっただろ」
シーフ「そういうつもりじゃなく、もしお前が……」
DM「わかった、わかった。もう一回やろう」
 抜き足差し足で忍び込み、やっぱり即死するシーフ。
シーフ「俺は部屋に忍び込むって言ったっけ?」
DM「ああ、言った」
シーフ「なあ、もちろんマスターシーフとして、どこにそんなショボイ罠が仕掛けられているか分かっているって」
DM「そうだな。で、マスターシーフはこの状況でどうやって入っていく?」
シーフ「簡単だよ。1インチ先の罠を警戒しながら匍匐前進で入っていくんだ」(得意気に
DM「なんでもいいよ」


 先日のプレイレポートで、ウィザードがライトの呪文がかかった石を縦穴に放り込んだことへの拍手コメントより。たまたま話題のきっかけにしてるだけで、長文かけて反論したいとかそーいう意図は無いっていうか、言ってることはその通り!

>ウィザードが明かり放り込む為に前衛押しのけてわざわざ前に出るわけは無いんだけど、TRPGじゃ宣言しない行動
>はそう取られちゃうんだよなぁ。

 実際問題として上記画像におけるやりとりのような「俺はプロじゃないが、俺のキャラはプロなのでそんな些細なミスはしない筈だ」という主張は、納得できる部分もあり、できない部分もあるんだよね(笑)

 まず明白にしておきたいこと。
 プレイヤーはキャラクターのレベルに見合った行動なんてそもそも取れないのだ。高レベルウィザードの知謀に匹敵する策など考えられないし、マスターシーフのように「こんなのわざわざ調べるまでもない」と、建物の構造そのものから罠を見抜いたりも出来ない。
 無論、同じキャラでもプレイ経験の蓄積によって初心者とベテランでは明らかに実行力は違うが、それでもプレイヤーの知力や判断力が18もあるケースなんて滅多に無いし、肌で感じとるものまで含めた全ての情報が把握できるわけではない。知識ロールで失敗した未知の魔物相手でも、歴戦のファイターならなにか閃くかもしれない。でもそれを「プロの感でなにかわかることはありませんか?」と聞くわけにはいかない。
 その逆に、ルールブック熟読してモンスターのデータも完璧に把握しているからって、キャラクターが知らないのなら知らない演技をする必要だってある。むしろその場合は「敢えて知らないふり」な以上、「必死に考えた末に敵の弱点を見事看過した」という痛快プレイの妨げにすらなる諸刃の剣。
 結局のところ、キャラの性能に不釣り合いな行動なんてして当然なのだ。恥じる必要もない。英雄ならざる人間が英雄物語を書いたって感動できるんだ。英雄ならざるプレイヤーが英雄を演じたって問題ない。

 で、画像の事例。
 例えばソードワールドのリプレイなんかじゃ、プレイヤーが緊張感の無い雰囲気でプレイを進めていた場合、「それは油断をしていたとみなすぞ」なんて不意討ちが発生してたりもした。
 これは多分に主観的な判断の元に行われる裁定の為、トラブルの種になるのかもしれないが、プレイヤーが実際に自分達が「ふざけてたもんなぁ」と実感するならば、それを受け入れるだろう。
 D&Dだと「単に歩いて中に入る」と「罠の有無を調べつつ中に入る」では移動速度が何倍も違ってくるので、「警戒していたかどうか」の判断は明白である。
 加えて周囲への視聴覚による警戒は自動で行われるから「上を見るなんて言ったか?」「聞き耳なんていつしたんだ?」なんて意地悪されることもない。無論、さらに念入りに目を凝らす、耳を澄ますという行動をとってより確実にすることも可能だ。
 戦略・戦術判断といったものはともかく、数値化されたデータで判断可能なファクターの多くは、自動で発動されてると思っていいわけだよもん。

 でまぁTRPG部のウィザードの話。多分DMによっては「誰がその石を落としたんだい?」「じゃあファイターで」という処理がOKな人もいるんじゃないかなぁ。
 自分の場合は、ウィザードのプレイヤーがD&Dのプレイ回数一〇〇回超えてる人間なんでその辺厳密にしたけど、何回もプレイしてないような初心者相手だったら、また違ったと思われる。些細なミスならともかく、それで死ぬかもしれない場合なんかは(笑)
 このあたりは、D&Dがミニチュアを利用した非常にタクティカルなシステムだというのに起因する。位置取りが明確であり、重要なのだ。それゆえに戦闘だけしてても楽しい。戦闘そのものが楽しい。無論、戦闘を極力最小限し、謎解きをメインにしても楽しいが、戦闘が楽し過ぎて戦闘しないと物足りなくなる麻薬ぶり。

 あ、それとこれはあくまで自分がD&Dのマスターをする時の話です。他のTRPGシステムなら「キャラの能力に見合った判断を自動的にしてくれる」とかあるのかも知れない!なんて思いつつ(えー
■TRPG四方山話 「夢オチ展開メタファイト」

 

DM「というわけで、敵はこの炭坑に立篭ってるようだ」
プレイヤー「炭塵爆発で吹き飛ばしてやろう!」
DM「いや、お前のキャラはそんな物理現象知らないって」

DM「『奴はあまりにも凶悪な魔獣だ。手を出さない方がいい』と村長は言う」
プレイヤー「大丈夫です。我々が必ずそいつを倒してごらんに入れましょう」(まぁ勝ち目のないモンスターが出てクリア不能なシナリオのわけでもないしね)

DM「扉を開けると残忍な笑みを浮かべた痩身の男が待ち構えているぞ」
プレイヤー「よし。DMの性格から考えて、罠が無いわけがない。皆、正面からの突撃は避けるんだ!」

プレイヤー「まぁ今回は結果的に損しちゃったけど、損得や効率重視じゃなくて、ロールプレイのこだわりを貫いた方がDMも『その意気やよし』ってなってくれるよ〜。情けは人のためならずだよ〜」
DM「そりゃーね。善人を貫いたら損してばかり……なんてことにするつもりもないさ」

プレイヤー「魔法の武器買おうと思うんだけどね。このDMはアンデッドが好きだから、付与する魔力はアンデッドベインにするよ」

 TRPGにはメタ視点という言葉がある。いや、TRPGに限らないんだけど。
 TRPGにおいては、いわゆるキャラクター外の視点のこと。

 で、またも拍手コメントから話を引っ張りつつ、脱線もします。
>昔、現代物TRPGで暗殺部隊が相手なシナリオのGMやった時、PCが見え透いた罠にハマってあっさり分断・包囲・殲滅
>されたのには焦った記憶が・・・PC殺しちゃいけない芸風のサークルだったんで夢オチにしたけど・・・はふぅ


 パーティーが全滅に追い込まれ、夢オチや仕切り直し……あります。ありますとも!!
 プレイレポートの“日輪”第一回“タービュランス”第二回でもそうでした。また、レポートでは書いてないですが、“天秤の守護者候補生”の第二回ラストでも、膨大な能力値ダメージが蓄積して歩くのがやっとといった状態で大トカゲや大ガエルがウヨウヨいる沼を渡ろうとし、逃げ切れずにほぼ死に絶える結末が明白となって夢オチにしました。
 どれも「このまま本当に全滅させたところでプレイヤーは当然としてマスターだって面白いわけがない」ゆえの前向きな温情措置であり、お互いの平和のために救済されたわけです。そしてそもそも「こちらとしても殺したくないのだ」というのが大前提として存在します。

 が、そんなD&Dのキャンペーンにおいて、かつて一度だけ完全に制裁目的でパーティーを全滅に追い込んだことがあります。う〜ん穏やかじゃないし無益だ。

 
 それは“タービュランス”のキャラ達がまだレベル7位だった頃の話。
 辺境を襲ったアンデッド達の殲滅任務を遂行する中、この軍勢を支配しているのがデスナイトだということが判明する。知識ロールにもそれなりの達成値で成功し、ある程度の能力も把握。来るべき決戦は近い!とまなじりを決する冒険者達。
 翌日、いよいよデスナイトの所在を突き止めて戦闘に突入せん!!
DM「デスナイトは君達の姿を遠方から認めると、自分に強化呪文をかけ始めたね」
ウィザード「よし、こっちも強化呪文をかけまくるぞ! クレリック、どう?」
クレリック「…………いや、その」
ファイター「どうした?」
クレリック「もう終わりの時間が近いから、今日の探索でボスとの遭遇は無いと思って全然準備してない」
ウィザード「…………はぁ!? 朝の呪文準備で、こっちはガチガチにデスナイト対策の呪文セットしてたよね!?」
 D&Dは巡航状態と特定の状況に決め打ちした場合では、ボロ負けが圧勝に変わるくらい戦闘力に差が出るのだ。
クレリック「そうだったんだ……?」
ウィザード「そうだよ! なんでそんなメタな判断するのさ!?」
クレリック「いや、だから時間が……」
ファイター「んなの理由になるかよ! 遭遇して『次回へ続く』ってなるかもしれねぇべ!?」
DM「ていうか事実そのつもりだったしね。時間無いのは本当だから。ま、いいや。このまま君達を皆殺しにするのも大して時間はかからない」

 結果、準備不足な以上勝ち目のないパーティーは散り散りになって退却するも、疲れを知らないデスナイトの前に一人、また一人と仕留められていった。
ウィザード「まぁ、お互いどんな呪文を準備したか、最終確認しないで出発した自分も悪いんだろうけどさ……」
 最悪の空気が支配する中、自分としてもここでキャンペーンを終わらせるつもりは毛頭なく。いや、他のプレイヤー完全にとばっちりだし。
DM「で、君達はデスナイトの前に成す術もなく皆殺しにされる夢を見たよ」
 となった次第。
DM「情報にもあった、君達より先行してこの地で戦っていたパラディンが率いるパーティー。彼らはデスナイトによって倒され、その無念の想いが警告の予知夢となったようだね」

 上のは思いっきりダメな例であるが、「キャラが知りえない情報を判断材料にして行動する」というのが一歩間違うと実に危険なことであろうことは、想像に難くないであろう。
 逆に無粋な迄に効率よく行動できてしまうこともある……というかそーいう場合の方が多いので、「いかんいかん。キャラはそんなこと知らんのだ」と自分に言い聞かせることもあったりする。
 で、この「キャラの枠を越えた効率化」をどこまで認めるかってのは、プレイグループで千差万別でどれが良くて悪いっていうのは無いんで、熟慮が必要。あらゆる手段でガチに全力を尽くすスタンスだってあるし、その逆も然りである。それに全ての判断をキャラの枠内で行なうことなど不可能に近いっつーかマヤ、恐ろしい子……!!ってなもんで無理だしね。

 放蕩TRPG部で認められない行為の一例としては、こんなのも。

DM「それじゃあ彼の発言に対して真意看破どうぞ」
プレイヤー「とりゃっ! …………うわ、ダイス目が4か。達成値9」
DM「君は嘘を吐かれてるとは思えなかった」
プレイヤー「うー、でもなぁ。達成値低過ぎだもんなぁ……」
DM「こらこら。君のキャラはそんなダイス目なんてわからないんだから」

プレイヤー「ドア越しに聞き耳を試みます……が、達成値が10」
DM「それじゃ素人の待ち伏せも見抜けないだろうなぁ」
プレイヤー「話にならないんで、もう一度聞き耳します」
DM「キャラは自分のダイス目をわからないよ。高い目が出るまで振り直すのは無理。念を入れる、という行為ならテイク20しか認めない」
(テイク20=通常の20倍の時間をかけ、ダイス目で20が出たことにする行動。原則的に失敗しても再挑戦可能な行動のみ適用可能)
 ちなみに「作業に対する手応えの違い」で上手くやれたかどうか、自己判断できてもいいんじゃない?という考え方もアリだと思うんで、それはそれ。
 そう、こういったロールはDMがプレイヤーに見えないようにダイスを振り、結果だけを通達するのがスマートなのだ。プレイヤーに「不審に思わない演技」をさせる必要がなくなるのだから。
 でもそれって、大半をDMが一人でダイス振ってるだけのゲームになっちゃうんだよね。プレイヤーは行動を宣言するだけ。それは切ない。自分で振るのが楽しいんだから。
 それに罠の捜索も解除もDMが振って、失敗して、死にました、なんて理解はできても納得できないからね!
 でも一度くらいは試しにフルマスクでのセッションもしてみたいって気はする。どんだけ緊張感が跳ね上がるのかってのが興味ある(笑)
■TRPG四方山話 「悪の瞳のアンチマジックレイ」

 
 ワダツミが好きなモンスターの一つ。それは眼球の暴君ビホルダー。
 邪悪で貪欲で、他の種族なんて自分達に隷属される為だけの存在であると傲岸に言い切り……いや同族間ですら自らの優位を譲らず、争いが絶えない……まぁ一部の人間みたいな異形です。
 ひときわ巨大な眼球からアンチマジックレイを発生し、冒険者達が唱える呪文のことごとくを封殺。携え、身にまとった強力無比な魔法の武具を単なる道具に成り下がらせる。
 そして頭部に生える十本の目柄からは魅了、催眠、恐怖、念力、致傷といった比較的……そう、まだ生温い威力な光線の外、石化、即死、分解消去といった一撃必殺の魔貫光殺砲を乱れ撃つ。
 極めて厄介で強力なモンスターの代名詞として君臨し、その名を関したコンピュータゲーム版も存在する、D&Dの“顔”の一つといえる存在だ。

 画像は色々なバージョンのフィギュア達。左二つは大幅な改革が行われ、フィギュアのサイズがゲーム内でのモンスターのサイズと厳格に連動するようになる以前の物。いわゆるAD&D時代である。
 一方の中央とその右は3.5版時代に発売されたもので、ゲーム内でのサイズ区分は「大型」とされている。この場合、ゲーム内のスクエアに占める面積は2インチ四方。デザインが変更されており、これまでのキチン質の外殻……といったイメージからゴツゴツとした岩肌のようになっている。
 目が潰れてるのはビホルダーリッチという亜種で、最大の武器であったアンチマジックレイを自ら封じ、強力な魔法能力を得ている。リッチなんで当然アンデッド。
 で、一番右の赤いのは最新の第4版用。またもイメチェンを果たした……どころか代名詞であったアンチマジックレイ能力を喪失し、光線乱れ撃ち能力も激減……ていうか1ラウンドに2本しか撃てない。外見はともかく能力は、もはやワダツミにとって魅力的な存在でなくなった哀しい現状。第4版なんて真面目にプレイするもんか。バーカバーカ。

 
 で、ビホルダーを語るにおいて外せないのはバスタードの鈴木土下座ェ門(笑)
 連載読んでいたので、単行本で見た時は「変わってるよね!?」と驚愕。「単行本時に修正が入る」という行為の存在を教えてくれた事件です。子供心に「雰囲気ぶち壊された」と失望を隠せなかったり。
 簡単に説明すると、ビホルダーはD&Dのオリジナルモンスターなんで、商業誌に勝手に出すとヤバかったって話。これがな。今となってはビホルダー版の作画は幻の存在であるが……まぁこの絵から手足取っ払えば出来上がりという説もある(えー
 ちなみにファイナルファンタジー1でもビホルダーが登場していたが、例によってデザインや名前が色々変更されることになっている。最新のバージョンではイビルアイになってるのかな。

 で、お気に入りのモンスターであるにも関らず、シナリオにまともに出せた試しがなかった。
 なぜだ! 強過ぎるからさ!
 放蕩TRPG部でもっとも高レベルのキャンペーンが、足かけ三年目に突入した10レベルの“タービュランス”。ようやくビホルダーをぶつけても問題無いレベルまで到達したといったところ。しかし出したら出したでパーティーを全滅させかねない諸刃の剣なので、扱いに慎重さを要するデリケートな駒なのだ。
 プレイヤーの中にもワダツミ同様ビホルダー神話を認識している人間はいるわけで、そこであからさまに手を抜いて「勝ちを献上」するのも違うしね!
 というわけでワダツミは放蕩TRPG部の各キャンペーンにビホルダーを遠慮無く投入できる日を心待ちにしております! それまではレッサー種のガウスで我慢してるよ!
 いやまぁ、このガウスですら(ルール上、問題無いとされるレベルで)キャンペーンに出して敗北した試しがないのだが!
■TRPG四方山話 「ドラゴンは偉いよ! 強いから偉いよ!」

 
 例によって拍手コメントから。
>ビホルダー数十体分のドラゴン>あ、圧倒的過ぎる、コレが大佐の常から言う強いドラゴンということか!?

 というわけで画像はエンシェント・ファングドラゴン対ビホルダー部隊の図。
 ビホルダーの幅が2.4メートルであるところから、ドラゴンの数字的な大きさを把握下さい(笑)
 なんか「集中砲火に晒されて絶体絶命! しかしただでは死なぬ! 命果てるその瞬間まで貴様達を喰らってくれるわ!」って感じですが、この後はキッチリ勝ってます。ドラゴンを無礼るな!
 でも強さ的には最強クラスのドラゴンではない。二つ名まで持ってる有名な個体ではあるんだけど。
 ゲーム上の数字で強さを表記すると「脅威度18」となる。これは18レベルの4人パーティーが通常遭遇する敵としてちょうどいい、というくらいの意味合い。そしてビホルダーの脅威度は13。
 これ以上突っ込んだルール的な説明はともかくとして、ウィザードがメテオやタイムストップ唱えたり、クレリックが火山噴火から都市を丸ごと守る奇跡を起こしたりできるレベルは17って辺りから、ご想像下さいな!
 …………つまりまぁこのドラゴンは目茶苦茶強い! だが上には上がいる! しかも沢山!

 右の画像はルール的に同じ大きさのブラックドラゴンのフィギュアと並べた場合。右下に言われないとわからないくらい小さい、子供のブラックドラゴンも置いてみたり。真ん中は人間。

 
 さらに強いドラゴンとなるとこれくらいビッグなサイズに。街が壊滅しております。
 いやまぁこれでも最強クラスには至らないんですが!
 これで脅威度24とかなのかなー。で、PCが21レベルを越えたら「エピック・キャラクター」と呼ばれ、伝説の存在となるのだ。すなわち、バスタードの四天王やそれと渡り合った勇者達みたいな超人領域である。1ラウンドで数百のダメージを与えるようになるので、脳内イメージ的に漫画で描写されてるくらいのことはやってのけれるぞ!(笑)
 比較対照として他のモンスターを引き合いに出すとしたら、最高位のグレーターデーモンで脅威度20。リヴァイアサンが脅威度25。神話の怪物状態。一国を滅ぼせちまうぜ。

 
 だが最強クラスのドラゴンとあらば、このロードス島戦記のエンシェント・ドラゴン並かそれ以上に大きくていいよね! 神話みたいに「空が見えなくなるほど」とか「山より大きい」は(D&Dのルールにおいては)厳しいとしても!
 で、ここまでくるとその力は圧倒的でして。例えば最大まで育った(グレートワーム)レッドドラゴン相手に、D&Dの現代世界ルールに収録されてるエイブラムスの120mm滑腔砲をダメージ期待値で叩き込んだ場合、300発くらい必要。(飛んでなければ)的がデカいので当たりはするが、強靭極まりない鱗を貫けないし、魔法の武器じゃないと大幅にダメージを削られてしまうから。
 もちろんドラゴンは強力な呪文の使い手でもあるわけで、それをフル活用された場合はメテオ以上の威力があるブレスだけに留まらず、様々な攻撃呪文だって駆使する。自身に強化呪文かけまくるし、回復だってしちゃうし、死んだ瞬間復活したりもしちゃうし、ヤバくなったらテレポートで逃げられるし、身も蓋もなく「あらゆる金属による攻撃を無効化」したりで、もう大変(習得している呪文に個体差はあるが)。呪文をどうにかしないと勝ち目がありませんな。
 つまりなにが言いたいかというと、今回の記事のタイトルに至るわけだ!!
TRPG四方山話 「風よ地よ! 火よ水よ! 我に力を与えたまえ!」

 
 ビホルダーの回でチラッと触れていたけれど、ファイナルファンタジー1にはD&Dを由来とするモンスターが極めて多い。というか殆ど。
(サンブレードやアイスブランドにディフェンダーといった、FFシリーズを通して知名度の高い強力な武器なんかもD&D由来)
 その中にはさらに大元を辿れば神話が起源となるモンスターが大勢いるのだが、他がD&Dオリジナルモンスター多数な為、中継地点にD&Dが存在すると見てよいだろう。
 今回はそんなFF1の中ボス達、四大元素のカオス達にスポットライトを当ててみるですよ?

 
 土のカオス、リッチさん。
 高位のアンデッドとして実に知名度の高い存在ゆえに意外に思うかもしれないけど、この「リッチ」というモンスターはD&Dのオリジナル。死体を意味する言葉を由来とする。
 件のバスタードにも登場しており、最高・究極のアンデッドと評される高い戦闘力を披露していた。が、ネーミングに関しては懲りたようで、モンスターとしての名前は「エデ・イー」。個人の名前として「リッチー」となっている。
 一方D&Dのフレーバーを全面に採り入れ、よりとっつき易くしたことで、国産RPGのスタンダードとなったソードワールドRPGでは、ノーライフキングと呼ばれている。これがまた強いこと強いこと。通常の限界レベルである10レベルパーティー程度では、弱体化などをさせるイベントアイテムや、不自然に強力なマジックアイテム、DMがあえて頭の悪い戦い方をするといった要素が無く、冗談みたいなラッキーが重なりもしない真っ向ガチバトルで滅ぼすことは極めて困難。エルダードラゴンと並ぶ最強のモンスターだ。
 で、D&Dでは固有のモンスターというわけではなく、後天的に手に入れる特徴ともいうべき存在。つまり、高位のウィザードやクレリックが儀式を経てリッチ化するわけだね。いわゆるバグナード状態。ってソードワールドもそうか。別に人間じゃなくてもなれるんで、この前のビホルダーリッチの他にもドラゴンのリッチであるドラコリッチとか「元が人間でも恐ろしいのに、そんな二身合体ありかよ!」と言いたくなる組み合わせも可能。
 余談ながらD&D世界のドラゴンのデータだけを集めまくったサプリメントに、脅威度50のブラックドラコリッチなんてのが掲載されているんだけど、ここまでくると神すら滅ぼす勢いである。なにせクトゥルフの脅威度が34だぞ。

   火のカオス、マリリス姐さん。
 そりゃイラストだって炎の真っ只中だぜ! 偶然だけど!
 別にD&Dで炎を司るモンスターというわけではないです。ていうか魔王の一人とかそーいうわけでもないです。高位のグレーターデーモンとして強力な存在ではあるものの(脅威度17)、無数にひしめくデーモンの一族だけあって、数はかなり多い。
 デーモンの軍勢における将軍や、さらに高位な存在の副官といった役回り。戦術家としての極めて高い能力と、あらゆるまやかしを見抜く魔眼を備える為、戦況の見極めは得意ですわよ!
 しかしタクティカルな面と同時に、その腕の数による多段攻撃も圧倒的。自軍と戦闘中の敵陣で一番の狙い所を見極めるや襲いかかり、無双乱舞で壊乱を引き起こさんとする。先陣きって突撃しないあたり、クレバー。
 クールでヒートで頭のキレる妖艶な女副官なんて、そりゃデーモンの中でも引く手数多に違いなかろう!(妄想
 ちなみにデーモンで一番の美形と言われるデーモンロードは美女軍団を従えており、そのツートップは強力なマリリス(脅威度23)二体である。
 で、彼女もD&Dのオリジナルモンスター。リッチのメジャー化もそうだけど、別になんでもかんでも版権の問題で突っ込まれるわけではないようである。国内外でビホルダーが登場するゲームは多々あるのだし、案外過剰反応だったのかもしれない。
 イメージ的には破壊神カーリーの下半身を蛇にした、といった感じだろうか。

   水のカオスはクラーケンどん。
 パイレーツ・オヴ・カリビアン2を観てる時の心境が海洋冒険してるD&Dだった人は俺だけではないだろう(笑)
 D&Dのこいつは一見ただの巨大イカに見えるが、その知性は極めて高い。知力21、判断力20という天才的な数値は、邪悪なる海魔の力をより高めている。マッコウクジラもビックリだ。
 老成したドラゴンに匹敵する巨体と天候を操る力の合わせ技に狙われた船は、航海終了ご愁傷さま。おまけに動物を支配する能力まで持ってるんで、メガロドンでも率いられたら厄介極まりない。
 肉弾攻撃は触手と噛み付きで九回攻撃を繰り出す為、恐ろしい多段ヒットを叩き込まれる恐怖。巨体なので一撃一撃も結構重いのだ。
 ソードワールドのフォーセリア世界においては水の上位精霊で、姿形は手足の生えたクジラ。ハリーハウゼンの映画では腕が四本有る半魚人って感じだったねぇ。

   トリは風のカオス、ティアマット様。
 大元はバビロニア神話の女神であるが、D&D世界では五色の竜の頭部を持つ女神だ。
 これによってファンタジー世界におけるティアマット=多頭のドラゴンというイメージは決定付けられたと言えよう。
 ご覧のとおりの大怪獣ぶりで、キングギドラとだって渡り合ってくれそうな勢い。呪文の使い手としてもやはり超一流……というか「一言唱える」だけで呪文が発動可能かつ、自分へ向けられた中レベル以下の呪文は完全無効。高位呪文へも高い抵抗力と神ぶりをアピール。スゴイぞー! カッコいいぞー!!
 そんな彼女のマイホームは地獄の最上層にあり、攻め寄せるデーモンを駆逐している。デヴィルと契約を結んでいるっさ。ケルベロスも裸足で逃げ出す地獄の番竜だ。だって当人の神強さに加え、愛人が五人いるんだ。どんな愛人かっていうと、レッド、ブルー、ホワイト、グリーン、ブラックそれぞれのグレートワーム。つまり最大まで育ったドラゴン5頭衆。当然、それに加えて無数の眷族達がいるのも忘れちゃいけない。
 地獄の第一層は精強なデヴィルの軍勢に加えてかような大怪獣軍団が守りを固めているだけあって、気の遠くなるような永きに渡って繰り広げられているデヴィルとデーモンの戦争において、ただの一度も二層以下への突破を許したことがない。
 性格は邪悪で自分の信者の魂なぞ金稼ぎの道具としか思ってないような怖い女神なんで、あんまりお近づきになりたくはない。しかし悪のドラゴン達からは「そこに痺れる! 憧れる!」と多くの信仰を集めるのだ。同時に下克上の対象ともいえるのだが。