ヨイコノミライ!
#1


著者 きづきあきら
出版社 ぺんぎん書房
掲載誌 COMIC SEED!
発行日 2004/6/10
定価 950円
オタク 4.67
パロディ 1.66
シリアス 4.17
ギャグ 2.00
痛さ 4.83
好きさ 3.00
 門倉高校漫画研究会に、突如現われた美人で巨乳の二年生・青木杏。
 その日から、なまぬるい日常に浸りきっていた部員たちの心に、さざ波が立ち始める……。

 オタクなコミュニティを舞台とし、そのネタに「あるある!」と共感しつつもやはりドリームの要素が多い理想郷が「げんしけん」で、過剰演出をしつつも共感と生々しさはよりコアなのが「辣韮の皮」です。そして、この系統で最も辛辣なリアリティを持ってるのが、本作品。
 現実に存在する多くの漫研がそうであるように、この作品のソレも漫画を描く為ではなく、漫画を始めとするオタ話を目的とした集団です。そして、皆地に足がついた等身大のパーソナリティーです。
 それがどういうことを意味するかと言いますと、貴方の周りにいる(いた)痛いオタクがそのまま描かれるということです。げんしけんみたいに「オタなだけで人格的には結構良い奴」だったり、辣韮の皮の様にギャグを緩衝材にしません。
「やる気のある人間が企画を立てても適当に流す」「自分達主導でノリノリな計画を開始するもすぐに飽きてなぁなぁになった末に沙汰止みになる」「絵が上手くなりたいと向上心のある素振りを見せつつも、実際の努力なんてロクにしない」「口を開けば大手批判。他人のそねみ!!ねたみ!!全てを知ってる様なツラで同じ話を繰り返す!!(大同人物語)」
 こういった行動を自分がしたこと、他人がしているのを目にしたことが無いオタクなんていない筈です。この作品がそういったオタクの負の面を容赦無く、そして鋭くえぐります。
 ほんと人間描写が生々しいんですよ。人によっちゃ「こんな人間実際いるのかよ?」って思っちゃうかもしれないくらいにダークなんですが、いるんです。断言しちゃいますが。そんな人たちを大集合させちゃったからもう大変。主人公だけが例外的に「実に出来た人間」なのが希少な良心というか、彼まで等身大だったら収拾がつかない(笑)
 もう一つフィクション色が強い所として、可愛い女の子が多数派な点もあるわけですが、眼鏡っ娘萌えーとか言ってる場合じゃなかった。親友との心地好い立ち位置----絵は自分の方が巧い----が一瞬で崩壊し、どうにか自分を上に立たせようと必死になる様子とかもう見てらんない。
 運動部員>一般人>オタクのカースト制度描写もこの手の作品ならば避けて通れません。無論この作品でもリアルです。キャラ達の行動がオタクの目から見ても十二分に痛々しい為、作中の一般人からの扱いも相応に酷いわけで。でも声優志望の女の子の精一杯の打たれ強さは個人的に見習いたい所です。
 世に痛いオタキャラは数あれど、そこから「笑える」という救済要素をとっぱらってしまった故にアグレッシヴなこの作品、今後どのようにして混沌の中へテーマを示すことになるのか、目が離せません。
 痛さに対する嫌悪感と続きへの興味、恐らくこの天秤は後者に傾く人が多いかと。
edith
 漫研が舞台で登場人物が皆ディープなオタクという濃さに早々とノックダウン気味。
 部活動の漫研って実際こんな感じだろうなぁと納得させられるほどリアルに書かれた、青臭い青春とは程遠い学園生活が痛くもあり痒くもあり……。
 そこに現れた、きょぬー美少女”青木さん”に救われたーと思いきや、綺麗な薔薇は棘だらけって感じで、奈落に突き落とされるそんなお話。
 なんだかんだで主人公には結構シンクロしちゃってます。

ゴルゴ31
 オタクって大小あれこそ自分の中の駄目な部分を隠していると思うのですよ。しかし人に突付かれることで時に駄目な部分を露呈することがある。それってある意味オタクにとって一番共感できるところであり、認めたくないところじゃないかなーと思います。
 この作品はまさにそれを描いてますよね。まったりとした漫研を描く作品かと思いきや傷に塩を塗る展開が続きます。オタクに潜む負の感情を見ていると心が痛いこと間違いなしな作品ですから作品の好き嫌いは大いにあるでしょうね。

にゃろ
 オタの夢も幻想も吹っ飛ぶ等身大。
 確かに皆揃ってイタいことはイタいんだけど、まだ高校生。どれも若さゆえの過ちってやつで、なかなか彼らを憎みきれない。清濁併せたところに魅力を感じてしまいますね。
 彼らの夢とヌルい現実をどうやって壊していくのか、爆乳娘のその策謀に踊らされる彼らは何をヤっちゃうのか。「怖いもの見たさ」に、これからの展開が非常に気になります。

 あー、いるよね、こんな人。
 と、思わず頷いてしまうようなとても親近感の沸く漫研の面々。
そして心当たりがあるせいで読んでるうちに痛々しく自分の胸に刺さってくるストーリー。
 それぞれのキャラの何かを求めても手に入らないもどかしさを漫研を通して描いてあって共感、反発、反省……読みながら色々な気分にさせられてそれが気持ちいいです。

檸檬来夢
 痛い、とにかく痛い。オタクの嫌な面を見せつけられている感じ。
 読んでて吐き気がする漫画は久しぶりでした。女の子のキャラが見れるので何とか読めますが、ストーリーをカバーしきれるほどではない。
 これだけ嫌悪感を抱けるというのは、リアルに近い雰囲気を伝えてるのではないでしょうか?

ワダツミ