萌えろ!杜の宮高校漫画研究部
辣韮の皮
#1


著者 安部川キネコ
出版社 ワニブックス
掲載誌 COMC GUM
発行日 2002/2/10
定価 780円
オタク 4.82
パロディ 3.82
シリアス 1.64
ギャグ 3.82
痛さ 4.18
好きさ 4.27

 15歳の滝沢少年が歩む非常識なオタク道!
 漫画好きなら一度はある「痛い思い出」をすべて網羅したギャグ4コマの決定版!!

 最初に言わせて頂きましょう……。
 看板に偽りなし!
 オタが一度ならず二度ならず、三度四度っていうかもう日常的に踏みまくってきた地雷の数々を抜かり無くリプレイしまくりな、武器になりうる作品。
 左図上のシチュをシンクロする為に無謀にも十年くらい昔に発行したイベント配布用のペーパーを発掘して読み返したら、あまりの恥ずかしさに破り捨てたくなりましたよ! こんなの人に読ませられるかーっ! 死ぬーっ! ……美化の方はやったことないよ!? 自画像描いたことないし!
 とまぁなんですか。読んでるとひたすらこんな感じの動揺を引き起こすんですよ。とにかく生々しい。げんしけんと違って追い打ち入れるからね!
 だがしかし、全編に渡ってリアルかというとそうでもなく。虚構の中にある程度の真実を混ぜるとよりもっともらしく見えると言いますが、この作品の場合は真実の中に虚構……というか、幾ら何でもそこまでは実際にやる奴いないだろ的なネタが多数混ぜられている為に、紛らわしい(褒言葉)。そのジャンルじゃない人間から見れば嘘と本当がかなり見分けつきづらいんだよね……。ボーイズラブ系の話とか、素で「マジすか?」ってそっち系が好きな友達に聞いちゃったもんなぁ。
 パロディ方面への注目も忘れてはならない。
 この作品は基本的に全てのパロディネタが実名で展開され、しかもそれがストーリーと密接に絡んでいる。主人公に至ってはナデシコにはまってオタクになったPN星野ルリヲである。
 また、コスプレクイーンである牧子先輩が繰り広げるお色直しの数々も見逃してはならない。彼女は常にコスプレをしている為、ベーシックな外見が判らないのだ。元ネタ全部は判らなかった!
 とまぁ強烈な対オタクブラックユーモアが主成分な本作でありますが、番外編である「主人公は如何にして一般人であることを辞め、オタ趣味を愛することになったか」なエピソードは秀逸。この作品がギャグだけではない深さを持ってることを印象付けてくれました。見事に作品を引き締めることを成功していると僕は考えます。
 あなたの思い出が、ここに。
織澤明史
 オタクのトコにはむしろS級。
 レベル濃すぎです、三十代以上の上級者推奨。
 ネタの内容全部に心の底から共感してみたいもんです。
 キャラも良い感じにヒネてて、こんくらい濃い口のが好きな人にはたまらんのではないかと。
 巻末の部誌の細かなネタぶりに感動できた人、僕と友達になってください。連絡方法はファンロード辺り。

寄星蟲
 なんというか、あまりに生々しい姿。爆笑ではなく、にやにやと黒い笑いが胸の奥から湧き立ってくる「アブナイ」漫画です。内容に共感を持ってしまう辺り、自分もいつの間にか立派なオタクになってたんだなぁ、とちょっと切なくなってしまいました。でも、続きを読んじゃうんですよね。
「オタクから足を洗った」と言っては周りから呆れられている主人公ですが、その気持ち分かりますよ。私も周りを見てると、自分なんてまだまだ一般人だって「錯覚」しちゃいますから。
 最後に、中学の読書感想文がそれはまずいだろ。私?私は紺碧の艦隊だったよ。小学生のときは零戦開発物語。

毛玉
 801から軍事まで幅広いネタをキャラ毎に上手く記号化してあり、苦手ジャンルのある人も結構すんなり読めると思います。
 ギャグの方はオタクの習性を多少ブラックユーモアを交えて描かれており、笑いの質としてはおそらく爆笑というよりは苦笑いの方が回数は多いはず。
 ただ巻頭からずっとテンション高めに突っ走ってきて、最後のエピソードで主人公の割と生々しい過去が描かれたりと、気の抜けない部分も多々あり。
 主人公と妹のやりとりなんかは身に覚えのある方も多いと思います。リアル妹ってこんなもんだよね。
 巻末の短編「杜の宮高校漫研部会誌」は作者の筆達者ぶりに脱帽。
 ホシノ・ルリ好きは涙無しには読めない一冊です。

ゴルゴ31
 主人公がオタクになることを決心するのが「げんしけん」なら、主人公がオタクを脱しようとするのがこの漫画なわけですがそれがこんなにも痛々しいとは。
 まあ、主人公:滝沢は「オタクを脱する」というよりは「自分はオタクじゃない!」と息まいている男なわけで作中でも言っているように、はたから見たら一番しょっぱいオタクなんですよね。ただ、それが上手い具合にギャグとして成り立っているのがこの漫画の良い所でしょうか。他にもちゃみぃや軍人くん等痛々しいベタなキャラが勢ぞろいですが、そんな痛さがギャグと上手く混同した作品だと思います。
 コミックスの作りがオタ作者らしい作りになっているのも面白く、現実にあるオタ作品が一巻よりも多くたくさんネタにされる二、三巻は個人的に1巻よりオススメしておきたいですね。

零黒
 キャラクターは結構ベタベタ(わかりやすい)。が、その言動はかなりディープ。
 ほぼ全てのコマで飛び交うオタク的発言は、作者とその周りがいかに「どっぷり」であるかを伺わせる。
 女性作者なだけに、作中腐女子キャラのBL思考が実にリアルで、むしろ小気味が良い。
 かといって男キャラをバイアス描写するわけでもなく、各世代のヲタ傾向を巧く表していると思う。
 一般人が導入として読むのも悪くはないと思うが、やはりシチュエーションに共感できるオタク向けの面白さ。
 四コマのテンポと、バラエティに富んだ絵でテンポよく読める。思ってたのより面白かったというのは本音。
 牧子が可愛い。

にゃろ
 バリバリのオタク向け漫画ってイメージがありますが、決してそんなことはなく。
 オタ転落への第一歩から、貴方の知らない濃ゆ〜い世界まで、幅広いネタが取り揃えられているので、漫研や同人作家の知られざる実態を興味深く見つめ、月子センパイへの萌えと過激なオタ度とのギャップに葛藤し、忘れた頃にやってくるいい話にジーンときたりと、明るく素直に楽しめます。
 主人公の脱オタ志向を軟弱者と一喝する古強者オタクにも、理解を覚えてしまう新米オタク(自称)にも、ぜひ。

東山海里
 痛い……っ。なにが痛いって自分がやった痛い過去がネタとしてある事か……。
 これやったなぁ……ふふふ……(影)
 この漫画きっと、同人女には「イタイ」部分が多少なりともあるんじゃないかナァ。
 上に書いた自分自身の投射とも別で、痛い部分も……。
 ここの気持ちはわかるやつだけがわかれっ(ぇ
 いやはや……さすが描いた人が女性なだけあるなぁと。
 ……あぁぁもう泉センパイかわいいっ(何)

hidaka
 オタク系ギャグ四コマとしては近年一、二を争う濃い作品。萌え系ネタからキツい軍事オタネタまで幅広く作品内で生かしている辺りに、作者の業の深さを感じます。また、本作品の特長とも言えるオタ自虐ネタは、ある種コミケカタログにおける「マンレポ」のような切り口で読者の古傷を抉ったりして、読んでてイタタタタとなる事請け合いです(かく言う僕も古傷抉られまくり……)。
 一巻末部に掲載されている主人公滝沢くんの失恋話は、男性オタなら誰もが身につまされるお話であると共に、全てのモノ作りをしているオタにとって原点復古を促すメッセージ。この部分だけでも一読して欲しいなぁ。

 ヤオイ、レイヤー、大手同人漫画家、メガネっ娘、軍人くん……ココまで属性分けされたキャラたちをひとまとめにして同じ漫研の中に放り込んでも破綻しないでハイテンションとときおり混じる黒い突っ込みに、読んでいて気分の浮き沈みが激しく、それがだんだん気持ちよく……。
 しかし作中のオタネタが元ネタ作品を知らないとわからないものばかりなのは読者を選ぶかも。

檸檬来夢
 現行のオタ漫画のなかで、一番暗部に食い込んでるやばい漫画。
 主だった人種はだいたい網羅してるし、でも、明るく描いてるのでましか。
 リアルはこれ以上に酷い事が……。
 読んでてかなりグサグサと心にクるので、怖いです(^^;
 私もヤオイイベントで売り子をさせられた過去が(略)
 自分はオタクじゃないと思ってる人も、一度読んでみたらいいと思います。

ワダツミ