金魚屋古書店出納帳
#1



著者 芳崎せいむ
出版社 少年画報社
掲載誌 OUR's girl
OUR's LITE
発行日 2003/5/15
定価 762円
オタク 3.71
パロディ 4.71
シリアス 4.29
ギャグ 1.86
痛さ 1.71
好きさ 4.57
「“金魚屋”はこの辺りでは最高峰の漫画古書店だ。潤沢……なんてもんじゃない。誰も底を見た事がないとまで噂されている空恐ろしいほどの在庫数。幅広い客層。『伝説の漫画の店長』が入院した後、代わって店を切り盛りしている孫娘。彼女を支える史上最強の目利き店員。小気味がいいほど良心的な適正価格」
 リアルならば「漫画読みならば有無を言わさず読んでみんさい」と言い切って単行本を渡し、話はそれからだと言い切ってしまうくらいオススメな逸品。でもとってもマイナー。しょぼん。
 G戦場ヘヴンズドアが「描き手」の側に立った傑作なら、この金魚屋は「読み手」の傑作。
 古本屋を舞台に漫画好き達の人生が情感たっぷりにクロスオーバーする様は、漫画好きならばどれも宝石の様に輝いており、羨望の眼差しを向けてやまないエピソードばかり。キーアイテムとして登場する名作漫画の数々を知らない人でも一切問題なく楽しめますし、知ってれば更に面白いのは言うまでもありません。前者はこれで知って読みたくなり、後者は急いで読み返すことになるでしょうこと請け合い。
 恐らく漫画に興味が無い人が読んだとしても十二分に良質のドラマとして作品が成立しているので、気に入るんじゃないかなぁ。漫画に関するマニアックな小ネタもくどくなく、それでいて軽薄じゃなく絶妙に織り交ぜられているし。
 読み手だけでなく、セドリ屋といった「ならでわ」の存在は興味深かったです。転売屋っていうとオタ的に聞えが悪いですが、ちゃんと仁義をわきまえてる人は嫌じゃないですね(笑)
 そういえばゴルゴ13ってなんであんなに単行本の種類が有るんだろうと思ってたんですが、この漫画を読んでようやく区別が付くように。でもどうして大量にバリエーションが有るんだろう。そんなことを考えながら手元のゴルゴ13を読んでしまうワダツミであった。
 漫画が好きで良かった。そんな気にさせてくれる素敵な作品です。
あおぼうず
 漫画を通じた漫画に思い入れのある人達の話です。
 漫画好きとして、登場人物達の漫画が好きだという気持ちがとても嬉しい。こいつらは漫画の中の登場人物だけど、自分たちと近いところにいると感じます。まあ同じ漫画好きでもそんなハートフルなお話なんて身の回りには無いですがね!
 ということで漫画を愛する者にとっては共感でき、なおかつ清々しい気分にもなれる良い漫画です。紹介される漫画についても知っていたらなおのこと面白かったんでしょうが。
 とりあえず私も金魚屋みたいな古書店に行きたい!そして漫画について語り合える彼女が欲しい!

ゴルゴ31
 今まで挙げられてきたオタネタ作品の中で一番大好きな作品。私が漫画好きである上に信者でもある「ゴルゴ13」ネタまであるのだからたまりません(これは単行本だけの描き下ろしです)。「別冊」になって「増刊」になって「コミック」になるというファンには至極当然のことでもこうして描かれるだけで嬉しくなってきます。
 そういった信者的見方だけでなく、古書店について問題になっている現代の中で、こういった親しみやすい書店と漫画の中でも触れ合えることに幸せを感じ取れる作品ですし、古き作品を愛し続けるというオタにとっての基本定義の一つを思い出させてくれます。一見で楽しむにはかなりの漫画知識が必要となりますが、それよりも登場人物たちの作品に対する愛情に触れることが出来れば十分に楽しめる作品と思います。漫画オタなら必読の書かと。

さぼり
 漫画の古書を小道具にしたいい話が8つ。各エピソードは漫画のストーリーが直接からむものや古書売買に焦点をあてたものなど色々趣向がこらしてあって、どれも綺麗にまとまってます。
 題材の漫画が古典ばかりなせいかディープな会話が出てきても「オタクのウンチク」というよりは「雑学の披露」的で痛さはほとんど感じませんね。
 ただし一話のカップルとキンコちゃんは何か間違ってる気がするので+1点(笑)

月咬
 出てくる漫画はせいぜい聞いたことがある程度。というか知らないもののほうが多いくらいで正直こんなの楽しめるかな〜とか思ってましたが、読んでるうちに登場人物の漫画(やそのキャラクター)への思いが伝わるようで、いつのまにか夢中になって読んでました。
 自分もこんな思い出の一冊がほしいなぁ……。

“古本の”“マンガ屋さん”
 実際にはマンガ専門な古本屋は知らないけれど、そんなマンガ好きにはたまらない古書店を舞台にした作品。
 009、ゴルゴ13、火星探検……と実際に存在するタイトルを題材にしながらも、マンガで繋がる人と人のストーリーというバランスが最高です。
 表紙や本編の背景に描かれた本たちも実在するものばかりなので、ストーリー自体はマンガに詳しくなくても楽しめるくらい
 敷居が低いのに、マンガに詳しければ詳しいほど深くも楽しめるという二度も三度も美味しいのです。

檸檬来夢
 古本屋、最近ではブックオフなどの明るい古本屋がそこかしこに出来て中古市場は一般的になったものの、あの独特の雰囲気をもった店は少なくなってきた感じがします。この物語は漫画ばかり扱う古書店の話。
 扱われている物語はどれも、漫画にちなんだ話になっており、その哀愁漂う懐かしさが、その時代へと誘ってくれるようです。出てくる漫画は古いものが大半で、知らない漫画も多数出てくるわけですが、うまく説明されていてほうほうと納得しながら読むことが出来ます。
 エピソードで言えばセドリの話、転売して利益を得るのはどの業界にもあるのですが、そこに出会いのエピソードを加えられていていいなぁと感心。
 こんな古本屋があったら、たぶん斯波さんのようにずっと居たいと思ってしまうに違いない。ブックオフですら、気が付いたら四時間立ち読みしていたなんでこともざらなものですから。

ワダツミ