■“海洋”キャンペーン 第3回(パーティーレベル6) 前編

・ライザー ファイター4/レンジャー2
・ダス インヴィジビル・ブレード1/ローグ3/レンジャー2
・アウリス クレリック6
・リッツ エルドリッチナイト1/ウィザード5
・フォルカー ファイター6

 文字通りの送り狼によって散々な目に遭いながらもどうにか引き分けに持ち込み、危機を脱した一行。
 メンバーの間に「やはり色々と準備不足だ。可能ならば出直してはどうか」という意見も出始める。
リッツ「実のところ、敵の目的は何だっていい。 肝心なのは、『堰止め湖を決壊させたらどうなるか』ということだ。1ヶ月間貯めこまれた豊富な水量。崖という高低差。下流の川沿いの村々。干害から、水害に一転し、比べものにならない被害がでることは想像に難くない」
 それに対してパーティーのブレインとして状況を解説するリッツ。
リッツ「今までは、問題はなかった。しかし、我々が敵と遭遇したことで、状況は加速している。敵からしてみれば、我々は脅威、なのだ。確かに地の利、野外能力を活かして優位に敵は戦っている。だが、(今遭遇している敵を見る限り)正面から戦えば、我々が必ず勝つ」

 
 状況の逼迫ぶりを再認識したパーティーは、よろしい。ならば速攻だ!と逆撃をかけるべく一気に距離を詰めることにした。これまでは迂回する為に滝から離れることになっていたのを、転進。崖はダークウェイの呪文で魔法の橋を架けて一気に登ることにする。
 が、それには一度休息して呪文を覚え為す必要がある。仕方無いので今日は昨日までの道を戻るぜ!
 となると再びロープトリックで休息をし、起きたら包囲されているのであった。
 冒険者達もハナから覚悟完了で、順次降りずに呪文解除の一斉降下。
ホークアイ「やはりな……見事に包囲されてるぞ。結構な歓迎ぶりだ」
 しかし冒険者達は全員が視認に失敗。
DM「いくぜ、ゼーガペイン! 喰らえ、エンタングル!!」
 別にホロニックローダーが出現したわけではなく、植物が絡みつく呪文がエンタングルなのだ(笑)
 写真の黒線がその効果範囲。広い。でも一人しかセーヴを落とさなかったので、移動力が半分になるだけで済む。付け加えるなら、全周囲で手前の配置くらい離れている。横や奥は置ききれないので便宜上。
DM「お次はクロスボウ。当然リッツに集中射撃。20発飛んで来て……1、1、5、5、3、1、6ダメージ。さらにソーサラーがファイアボール。反応セーヴ……って全員成功かい! おかしくない? 12回反応セーヴさせて……失敗が1回?」
ダス「分後半に揺り戻しが(笑)」
アウリス「そーいうこと言わない!!」
 幸先よく敵の先制攻撃による被害を最小限に抑えることに成功したのだが……。
フォルカー「最寄りのコボルドに移動して攻撃」
DM「ではスパイクグロウズの呪文がかかっているゾーンに踏み込む。反応セーヴ失敗したんで足を怪我した。移動力半分。なおも進むと落とし穴」
 どこで野営しているのかバレバレなので、トラップゾーンが仕込まれているのだった。
 コボルドの射撃は前衛の装甲を貫くのは難しいのだが、なにせ数が多い。飛び道具を持たない上に罠に阻まれ近づく事もままならない前衛と、弾幕と攻撃呪文によって呪文を存分に使用出来ないリッツとアウリス。例によって状況は絶望的であった。
リッツ「これは前回の宝で手に入れたエレメンタルジェムを使うしかないか……大赤字だけど……」
 大型アースエレメンタルを召喚し、敵のキャスターを急襲させる。かなりパワフルなので、十分蹴散らせる筈だ!(右写真
リッツ「命が惜しければここは退け!」
DM「いや、圧倒的にそっちが不利じゃん!(笑)」
リッツ「くぅ!」
リザードマン「貴様も虫の息ではないか! 命が惜しければこいつ(だけ)を退がらせろ!」
リッツ「そんなことしたら死ぬよ!」
リザードマン「ならば今死ぬか!」
リッツ「しょ、しょうがない……手番が来たら退がらせよう……」
アウリス「ウィンドウォールを唱えて矢を遮断します」
DM「それは竜語でなにか交渉しているけど、それがわからないから勝手に行動してるという解釈でいいの?」
アウリス「ああ、そうかぁ。とりあえずそうですね」
DM「じゃあ契約が反故にされたので、容赦なくコールライトニングとマジックミサイルがリッツに飛んで来ます。コールライトニングのセーヴに失敗したら死ぬ」
リッツ「どうにか生き延びた……俺が『待て、交渉中なんだ!』と止めるべきだったんだなぁ……」
DM「フィンファンネルが敏感過ぎた(笑)」
 結局これが最大のピンチだった。ウィンドウォールによって守られ、キャスターが行動の自由を得たことで戦況は引っ繰り返る。言われなくてもスタコラサッサだぜ!とあっさり撤退するコボルド達。
 朝っぱから酷く消耗したので、しょうがないのでまた野営をすることに。今回は視認が高く暗視能力を持つホークアイをメインの見張りとして立たせ、通常空間で休むんだぜ。
 ゆえに夜明けまで延々と嫌がらせ襲撃を受け、寝不足疲労状態で夜明けとなる。
 敵の本拠地間近なので、避けられぬ事態ではあった。
 そして聞こえる岩と岩を打ちつける音。それは堰止め湖の水を解き放たんとする破滅の足音である!

 
 崖を登り、堰止め湖へ急行するぜ! するさ! するとも!
ワーウルフ「よく眠れたかい? こっちも待ちくたびれていたんだ。そろそろ決着といこうか」
 激突する両者! 速攻で落とし穴に落っこちるダス!! 反応セーヴの出目は4だ!!
 ここでパーティーは思い知ることになる。真の人狼の恐ろしさというものを……。銀の武器は用意していないが、大ダメージで押し切ればどうにかなるというのが思い上がりだということを……。
ワーウルフ「ハッハーッ! どうした! その程度の攻撃で俺を倒せるつもりか!? 甘いぞドモン!!」
 先天性ワーウルフは銀でない武器によるダメージが10点減少され、その上毎ラウンド5点のHPが再生する。そこへ仲間のキャスターからかけて貰ったメイジアーマーとバークスキンによってACは+6され、そもそも攻撃が当らない。だが冒険者側はディスペルマジックを用意していなかった為、それを解除も出来ない。
 強打をして一撃のダメージを高めないとダメージ減少と再生能力を打ち破れず、だからといって強打で命中率を下げると攻撃が当らないというアンチスパイラル助けてグレン団状態に陥る一向に……。
DM「ところで誰も銀の武器を持っていないの?」
全員「持ってないようです」
(ちなみに全員魔法の武器やミスリル製の魔法鎧で身を固めているが、銀の武器はそれらの十分の一以下の値段で買えるのだ)
リッツ「そうなんだよねぇ。高速治癒じゃなくて再生なんだよねぇ……」
 リッツは最初の遭遇の時点でわかっていたのだ。再生を持つモンスターは、弱点となる武器(この場合は銀)以外の攻撃では非致傷ダメージとなって殺せないことを。だがこの瞬間まで忘れていた。*1
 殺す手段が無いという絶望的な状況の中、引くこともできずに戦い続ける。ありったけのリソースを注ぎ込み、そろそろ限界だぜ……?
ワーウルフ「まぁこれで俺の仕事は十分果たしたな。あばよ!」
 どうにかHPを残り一桁まで削ることに成功していたのだ。ワーウルフにしても死なないまでも縛られたりで拘束されては面白くない以上、無難な撤退だった。どうせ冒険者達に戦う力など残されていないのだ。撤退するしかないだろう。
 だがしかし!
リッツ「『十分な時間は稼いだ。今からいっても間に合わないぜ』ってことか……」
 あれ?
 その頃ダスはようやく自力で落とし穴からの脱出に成功した。
ダス「空気がうまいぜええええええ!!」

 そして皆さん、いよいよ『今日のその時』がやってまいります。
全員「よろしい。ならば前進だ!」
 もはや一刻の猶予も無いに違いないと、怪我の治療もろくにせぬまま、堰止め湖に向けて突撃を再開する冒険者達。
DM(な、なんだってえええ!? おいおい、ワーウルフはすぐに怪我を再生して戻ることだってできるんだぞ!? つーかそれがなくたって最後の守備隊にどうやって勝つつもりだ!?)

 次回に続く!

*1
 ルール通りだと窒息死とかさせられるのだが、首はねようが殺せないのを窒息で死ぬのもなぁということで、ハウスルールで死なない。加えて非致傷ダメージに上限が設けられて−10までとなっている。
 いや、非致傷ダメージっていわゆる「手加減攻撃」なんだけど、これって何ダメージ与えても相手が死なないのね。だからルール上何万ダメージ蓄積しても、生命に別状が無いのだ。
 HPが10の相手に真剣で斬り付けて20ダメージ与えて−10に達したら死ぬのだが、峰打ちで非致傷20ダメージは昏倒で済む。これがどんどんエスカレートして5000ダメージだろうと気絶しかしない。で、それがなんか気に入らないんで独自仕様。
■“海洋”キャンペーン 第3回(パーティーレベル6) 後編

 銀の武器を持たないままワーウルフと戦い、満身創痍な冒険者達。
 決壊を阻止せんと突撃を開始!!

DM(いかん……死んだ。どう考えても死んだ。……パーティーがな!!)
 なにせワーウルフは倒せていない。即座に撤退でもしない限り、傷が再生すればまた襲ってくる。いや実際にはとっとと逃げてすらパス・ウィズアウト・トレイスの呪文が無い以上、昼夜兼行で街まで逃げでもしない限り執拗に追撃されてジ・エンドだ。そして次の戦いとなればワーウルフはフルコンディションに対し、冒険者達は呪文を殆ど使い尽くしているからだ。だがまぁそこまで容赦なくはしない。撤退するなら見逃そう!
 そう思っていた時期が私にもありました。
DM(と、とりあえず決壊部隊の戦力を大幅に減らそう……ドルイドやソーサラーが混ざってると完全に詰む……)
 それは同時に、高価なマジックアイテムを装備したゆえの「このシナリオのメイン収入」の消滅を意味していた。

 
 塞き止め部分の破壊をするオーガとコボルト(ちゃんとツルハシ持ってるフィギュア)。
 冒険者達の特攻大作戦に対して、オーガ達が作業を中断して迎撃に向かう。
リッツ「急げ! まだ間に合うぞ!!」
全員「オーッ!!」
DM(うん、今逃げればまだ間に合うよ……)

 
 HPの回復すら殆どしないまま突撃していたので、オーガの攻撃を一撃受けるだけで昏倒してしまう前衛達。
 それでも攻撃力だけは傷付いてようが衰えないので、どうにか「どっちが先に手数が尽きるか」状態の限界バトルを叩き付ける。次々と戦闘不能になっていく仲間達と、刺し違えるオーガ。
リッツ「ホークアイの攻撃が外れたら……死ぬ!!」
 遂には味方に死者を出さずに勝つには、最後のオーガを使い魔の攻撃で倒すのみとなった……。しかし脆弱なファミリアーの肉体では、オーガに殴られたら即死しかねない極限状態。
ホークアイ「どうやら俺の出番のようだな……任せろ、奴は俺が仕留めてみせる!」
(ちなみにホークアイは動かしたりダイスロールはプレイヤーだけど、台詞は全部DMが言っています(笑))
ホークアイ「喰らえ! 悪を討つ一撃!!」
 なんと決死の攻撃はクリティカルヒット! 悪を討つ一撃のダメージも2倍になり、オーガを撃破!
全員「すげえええええ! さすがホークアイだ!」
DM「おいおい、クリティカルしなきゃ反撃で死んでたぜ……ドラマだなぁ。これだから楽しい」
 ミラクルヴィクトリーに沸き立つ冒険者達。しかし現実はまだまだ過酷だ。
DM「オーガの戦いを見守っていたコボルト達が動きだしたね。ツルハシやクロスボウを構え出す……」
コボルト「や、奴らは瀕死だぞ! 俺達でも勝てる! 皆、戦うぞ!!」
アウリス「回復呪文はもうヴィゴーのワンドしかない! 毎ラウンド1点回復するだけじゃ絶対間に合わないよ!」
ダス「くぅ、コボルトの攻撃でも一発喰らうだけで倒れそうだぜ……」
リッツ「…………仕方ない。休戦しよう!! コボルト達、このまま戦えばお互いに犠牲が出る! 我々は諦めて撤退するから、君達も攻撃しないでくれ!!」
DM「コボルト達は指揮官を失ってるだけあって、やけくそ気味の突撃をせずに君達を撃退できるならそれはそれで……みたいな空気になってるね」
コボルト「……わかった! もう二度と来ないと誓うなら、引き分けとしよう!!」
リッツ「よし、皆撤退するぞ……」

 ある程度距離を取り、傷を癒す。
DM(ワーウルフに再攻撃させたら全滅だな……)
リッツ「…………ここで帰るわけにはいかない。やはり決壊阻止は譲れない」
アウリス「約束を破ることになるけれど、下流の人たちを考えたやむを得ない……」
DM「まぁこの世界の一般人の感覚だと、コボルトなんて敵以外のナニモノでもないからね。騙し討ちくらいなんとも思わないのは珍しくないだろうね。いや、キミらがそうだとは言わないけど。人命と比べてコボルトとの約束を優先ってのはかなり受け入れ難いのが一般的な認識と思って問題無い」
ホークアイ「ほぅ……一度結んだ講和の約定を反故にするか……」
リッツ「くっ……仕方ない、仕方ないんだ……」

 というわけで、傷が癒えたところで再び接近する冒険者達。
コボルト「二度と来ないと約束した筈だぞ! どーいうことだ!!」
リッツ「申し訳ないが、やはりこのまま堰止め湖を決壊させるわけにはいかない。先程と違い、こちらの怪我は完治している。命が惜しければ撤退するんだ。追撃はしない」
コボルト「卑怯者! 嘘吐き! やはり人間は信用ならない……!!」
DM「勝ち目が無いのはわかるので、捨て台詞を残しまくりながら口惜しそうに撤退したね」
アウリス「どうにかなった……ふぅ」
DM「塞き止め部分を知識:建築術で見立てた所、自分達ではこれ以上の手出しは出来なさそうだね。このまま軍が土木作業要員を連れてやって来るまでここを維持する必要がありそうだ」

 如何にして防衛するかの作戦を相談する冒険者達。
 大体のプランが固まり、まずは一晩休もうかとなった時だった。
フォルカー「…………ところで我々はワーウルフの攻撃を受けていた」
ダス「俺以外はそうだ……穴に落ちてたからな!」
リッツ「…………しまった。ライカンスローピィに罹患してる可能性が高い!!」
アウリス「なんだってー!?」
リッツ「次の満月までにどうにかしないと、我々全員獣人化するぞ!!」
 パーティーに電流走る!
 そりゃそうである。あれだけ無茶な強硬策を繰り返して奪還したのに、今すぐにでも撤退しなければ治療が間に合わないかもしれないのだ。
リッツ「今の月齢を考えたら……阻止限界点は……」
ライザー「限界まではここで粘って、撤退か……」
ダス「自我を失うまで戦うってわけにはいかないな」

 結局、数日粘った末に高位の司祭がいる都市まで撤退する冒険者達だった。途中、背中に迫る濁流から猛ダッシュで待避しつつ……。