まにぃロード
#2,3


著者 栗橋伸祐
出版社 メディアワークス
掲載誌 電撃大王
発行日 2002/10/15
2003/5/5
定価 600円
オタク 4.72
パロディ 3.00
シリアス 2.86
ギャグ 2.71
痛さ 2.14
好きさ 4.14
「しかし胸部に重大な欠陥が……」「それでヨシ!! 貧乳万歳!!」
 ……すいません、引用間違えました。
 オタショップ物として壮太君のアキハバラ奮闘記が良くも悪くもネタの深さがライトなのに対し、こちらは一巻から更にディープな所に切り込んでいきます。特に非電源系ホビーに関してはこの作品に勝る存在は無いかと。コミケは当然のこととして(面白かったものの、オチは捻りがなかったかな)、TRPG、ボードゲームなんかはオタ作品でもそれほど言及されない素材なんで嬉しいですね。そんな中でも珠玉の出来は二巻ラストのドール話。一般人の“たかが人形”がかけがえのない存在に変わっていく様を描いた傑作です。あれで殴れたら鬼だっ!
 三巻のカラー扉がビートルズの「アビィロード」のパロだと最近知りました(笑)
 というわけでパロディネタも山盛りてんこ盛り。ジャブとして毎回の扉絵はいすずちゃんの様々なコスプレが可愛いことこの上なく、ヘヴィなのでは栗橋さんのセルフパロ。ネットゲーム話のヒロインがコミック版ダンジョンマスターのウー・ツェにソックリなのはニヤリ。が、それはまだまだ序の口で。
 TRPGのストーリーはまだ大連を名乗っていた頃の同人アンソロ収録作品だと掲載本を手渡された時は、なんとも驚いたものです。その他小ネタ挙げるときりがありません。
 笑いあり涙ありの“いい漫画”な本作は三巻で終了。物語は兄から妹へ引き継がれて、まにぃロードの弱点部分をメインとした「ぷりてぃまにぃず」がスタートします。でもそれはまた別のお話。
さぼり
 コミケ、TRPG、ドール、はては本物の潜水艦まで出てくる豪快なネタチョイスに乾杯。各ネタの美味しいところを一エピソードずつきれいにまとめてるので、一つのネタに特化した作品よりも楽しめる事が多かったです。
 三巻では信濃も登場。続編の主役ですが、こちらでサブキャラ扱いのほうが格段に生き生きしてるので続編ファンにもオススメ(笑)
 武蔵は終盤の展開を見るとオタク趣味以外はいたってまとも……というかむしろ立派な起業家で、最後ダラダラの心地よさに溺れず旅立つ姿はオタク漫画の中にあってかなり強烈なメッセージだと思います。漢だ。

月咬
 コミケ!ドール!TRPG!……と相変わらず多彩なジャンルを制覇してますが、特にACT15(二巻)の「DOOL魂」がお気に入りです。
 一生懸命に慣れないドールをつくる社長さんがドールへの(まともな意味での)愛情が芽生えていく過程がとても丁寧にかかれていて思わずホロリと……。
 主人公も自分の趣味を押し付けるでなく、理解してもらおうとするのも好感。
 三巻で終わりなのが残念です……もっとまったり各ジャンルを掘り下げてほしかったなぁ。

弖國天音
 第二巻に入り、「まにぃロード」の店としての闘いがスタート。……といっても開始早々コミケネタがあったりするわけですが(笑)
 テーブルトークRPGやネットゲームネタと各分野を軽く触れつつ、趣味の世界をよりディープな部分に至るまで取り上げているのはうまいなぁと感じるところ。著者も触れてはいますが、ここまで取り上げるのなら鉄道関連についても何かしらエピソードを入れてほしかった…とも思えます。
 三巻に入って登場する妹の信濃、兄の大和。共においしいキャラクターであります。特に大和に至っては、まっとうなことを言っているものの、この作品の中ではその存在がギャグですね(笑)
 この三巻で完結となるわけですが、信濃にはもっと活躍して欲しかった!
 琴線に触れるエピソードは、ACT15「DOOL魂」で決まりです。人形者、球磨さんの勤務先である「大井設計」の社長がドール作りを始め、いつしか亡くなった娘の姿をドールにダブらせる描写は白眉です。
「たかが人形」と言っていた社長が、完成したドールを目の前にして壊すことができない。
 誰もがきっとオタク心を持っている。そんなことを確信できるエピソードでした。
 それにしても青葉がイイ!なんだかんだ言いつつも、このカオスな世界を理解しているところがステキです!青葉LOVE♪(笑)

羽澄葵
 ストーリーはシンプルかつオタク度は日常的なのであまりオタク性を感じなかったりしますが、実はアキバの世界観を如実に描いてる部分もあったりするので数年経ってから読むと感慨深いモノになるかなと思います。最初はウザイ男だと思ってた武蔵も回を追うごとに愛着を持って読んでたのが不思議な所です。はるなさんが髪を切ってから好転した漫画ですね。
 あんまり関係ないけど女の子が「ウチ」っていうとちょっと堪らないです。

「それで良し!!貧乳万歳!!」……まったくその通りである。
 というのは置いといて、三巻で完結のこの作品。
 たけぞうの兄妹が出たり盛り上がってきたところで終ってしまうのがかなり残念。
 そんな中一巻に引き続きフィギュアにコスプレ、コミケetc、オタネタがたくさん詰まってますが、最後までオタクネタそのものがネタではなくオタネタ周辺の人間模様が描かれてるので、わからないジャンルのネタがあっても楽しめるのが高ポイントです。
 個人的には「101匹メイドさん」の中身が気になる今日この頃。

檸檬来夢
 今回は一で見事に店を再建した続きから最終回までが範囲。
 全体を通してオタネタがちりばめられている今作品ではあるが、今回は結構ディープなところまでネタにされていたりする。ACT13のTRPGとか。ACT9−10の冬コミネタなどの含まれる二巻はかなり暗黒面だとおもう。
 二巻でお気に入りの話はACT15 DOOL魂。私はDOOLには興味はありませんがその話の内容に心惹かれるものがあります。亡くなった子供の変わりに人形をというのは、そう珍しい話ではないからです。萌えのためのDOOLもいいですがこういう静かな話もいいです。
 三巻は主に武蔵の妹、信濃の話。武蔵が古いオタだったのに対し、信濃は現代のオタ。その差が物語事体にいい活力を与えたのだが、まにぃロードとしてはやっていけなくなった感じでは合った。後に信濃が主役で続編が描かれる事になるのだが。
 三巻でお気に入りの話はACT22 新たなる旅立ち。焼けた店舗から再建する話は読んでいてぐっとくるものがある。ここに来て仲間たちのバックアップがあってというのは熱い。青葉の「いらっしゃいませ。まにぃロードへようこそ」は色々な葛藤があった彼女の一番良い台詞ではないだろうか。武蔵が主役のこの漫画において、実は青葉の視点での話だった、というのは感慨深いじゃないですか。
 はるなさんといすずには、もう少し出番が欲しかったな。楽しい漫画でした。

ワダツミ