恋の門
#1


著者 羽生生純
出版社 エンターブレイン
掲載誌 月刊コミックビーム
発行日 2000/5/10
定価 880円
オタク 3.50
パロディ 3.33
シリアス 4.17
ギャグ 2.92
痛さ 2.50
好きさ 3.83
「アニメやコスプレを愛するオタク女と、漫画芸術家を名乗るスレたサブカル男。すれ違いながらも心と体を求め合う、かつてない愛の物語」
 取り敢えず絵柄で敬遠するな!と声を大にして言いたい。ポスト・ガロのようなサブカル漫画誌コミックビームの中でも取り分けディープな印象な気がしないでもない本作であります故に!(えー
 絵柄の関門を突破しても、内容がこれまたパワー&インパクト。
 なんてったって石漫画。その主人公設定からしてつげ義春漫画の影響を感じずにはいられない。
 この作品は、男と女、二体の知的生命体が異性に求める欲望と幻想をリアリティ在り過ぎて洒落にならない生々しさで描いているんですな。その辺が勢い在り過ぎるもんだから一回転してギャグになってしまってる所もあるけれど(笑)
 外見が好みだから。ヤらせてくれたから。恋愛のきっかけとしては見事に俗物的な二人のスタートライン。
 現実の恋愛なんて架空キャラと違ってまず大抵はなんらかの打算と見栄と自己欺瞞と愛情が絡み合い、内心こんな風にフル計算して付き合ってしまうもんだよなぁと、容赦無さに感心すると同時に痛々しい。恋愛ドラマでここまで曝け出した描写してたら、多分一般の視聴者引くだろうなぁ。だが、そこがいい。応援っていうか心配。
 門の石に対するスタンス・表現や異常に痛いストーカーといったフィクション然とした要素を備えつつも、物語の骨子である心理描写は地に足がつき過ぎているのが、却って超現実的な印象になっていると僕は思います。
 映画だとその辺がだーいぶ柔らかくされていたのは、やっぱり好き嫌い分かれますか(笑)
あおぼうず
 生々しく痛い、けど面白い青春漫画。実はこれを読んだのは映画化にともなってハンディ版が出されてからなのですが、その時読んで、どうして俺は今までこんな作品を読んでいなかったのかと後悔しました。
 主人公の恋乃と門の二人は、それぞれ際だったオタク的な人物ですが(門の場合はオタク趣味ではないがそのこだわりがオタク的)やってることはれっきとした青春漫画。
 一巻では二人が知り合い、お互いのことを大して理解しえない状況での話で、まだ序章としか言えないのですが、それでもこの作品の濃密な面白さは伝わってきます。

ゴルゴ31
 これがオタクの恋愛のデフォだと言ったら怒られそうですが、実はオタクの恋愛をストレートに描いている作品だと思います。恋愛の生々しさとオタクの臭さ(体臭という意味ではなく)を存分に感じとれるし、門と恋乃の歪な関係はオタクのリアルを感じさせます。
 門が初めて同人誌即売会に行き、恋乃が友人たちと話している時の門の表情は特にリアル。オタクである私も同人女性向けで知らないジャンルの話とか聞かされたらああいう表情になるんだろうなあ。

さぼり
『自分の世界を作ってる人達』の描写が容赦なく、佐良の凄さは別格としても(笑)自分の得意分野の話になると突然生き生きする主人公なんかは程度の違いはあれど自分にも心当たりがあって痛いです。はみだし者に対する社会の冷たい目やツッコミもリアルでいたたまれなくなりそう。
 とは言うものの、ネガティブな描写が多い割にオーバーアクションや打算だらけの心理描写が笑えて実はけっこう読後感が良かったり。面白いです。

 狂気と紙一重の純愛……むしろ狂気寄り?そんな男と女の物語。
 と言うとどこにでもありそうな話。
理解されない芸術(漫画)家とコスプレイヤの恋愛物語。これもどこかにありそうな話。
 しかし羽生生純の繊細で大胆な線で描かれると息苦しささえ感じるほどの迫力。
描きたい作品が理解されない苦しみや、理解できない恋乃のコスプレにかける情熱いつのまにか途中から門と同じ鼓動で読んでるような感覚にひきこまれる。
 漫画、コスプレと道は違うけど、狂気手前の一途さはある意味オタクの到達点かもしれない。

檸檬来夢
 恋乃が電波過ぎて辛い、読んでいてストーリーではなく、キャラクターによって苦痛を受ける私にとって珍しい漫画となった。
 出てくる主人公は二人ともどこかずれている。世間からもずれているし人間関係もずれている、はたして、この二人は何がしたいんだろうか?
 ラブストーリーを形作っているようだが、外ッ面だけで、中には虚しかないそんな印象を受ける、映画になればまだみれるのだろうか。

ワダツミ