DOLL MASTER
#1


著者 井原裕士
出版社 メディアワークス
掲載誌 電撃大王
発行日 2001/7/15
定価 550円
オタク 4.00
パロディ 2.43
シリアス 3.00
ギャグ 3.00
痛さ 1.86
好きさ 4.14
 私は、お人形には魂が宿るのだと信じている。
 ごく普通の「お人形作り」が趣味の女性・雛子が、フィギュア作りの世界にはまり込んでいくお話。というわけで世間一般的に言う「ドール」ではなくてガレージキット方面の、正確に言うならば「フィギュアマスター」って感じ。
 もしくは造ったフィギュアがブライシンクロンマキシマムによって(違)、巨大化・意志を持つ技を体得した男・久具津とその押し掛け弟子の話とも言える。人によってより感情移入できる方が主役に見える、W主人公と思ってよい気がします。
 いかにもピュアなハートの可愛らしい女性が純粋過ぎる故に何の偏見もなく久具津の創り出す作品の素晴らしさに魅せられ、染まっていく過程が実に微笑ましくも面白い(笑)
 思わず「あー、一般人の彼女がこんな風に染まってくれたら素敵だろうなぁ」とか、思っちゃったよ! そんなワダツミは、オタと承知の上で付き合い始めた彼女に別れ話で「やっぱりメイドなんて私にはよくわからないよ!」と言われたことがあります(最悪だ
 女性なら持っていてもなんの違和感も無い「お人形作り」という一般的な趣味がドンドンとエスカレートして逸般化の進む様子が、実際のフィギュア作りの情景をディティール充分に描かれている為、そっち方面の知識が殆ど無い自分も思わず「ほぉぅ。成る程なぁ……」と感心させられることもしばしば。
 むしろその辺だけで満足いく楽しさな為に、フィギュアに命が宿って動き回るという要素が人によってはオーバーアクション過ぎて蛇足と感じてしまうかもしれません。いやもう、リアライズしてくれるなんてドリーム、皆持ってることなんですが!(笑)
いちめどー
 イラストレーターである僕とは違う畑のヲタクであるフィギュア師を扱った本作。
 一昔前ほどではないですがまだ色々と謎の多いフィギュアの世界を、どこか謎の多い玄人の主人公(フィギュア造形師)と初心者のヒロイン(読者)に置き換えて描写してあり、我々フィギュア初心者が持つ疑問などを比較的丁寧に解説してあります。
 ストーリーとしての出来もなかなか良く各キャラの個性も立っているため、ホビー雑誌に載っている模型制作漫画などを除けば、フィギュアに関する事に触れるいい教科書になるのではないでしょうか。

ゴルゴ31
 軽い雰囲気を漂わせながらも、作者自身がワンフェス参加者だけにガレージキットに関する知識、事情は凄いリアル。それでいて読む前までガレージキットにあまり興味が無かった私に興味を持たせた本当に良く出来た作品です。
 それに人形に魂が宿るという設定で安易なオタク作品になることは無く、その設定を上手く使ってあくまでもガレージキットに特化した作品になったことが良いですね。それに雛子ちゃんの存在も大きい。素人な彼女がガレージキットの世界にのめり込んでいくからこそ読みやすくて感情移入しやすい作品になったはずです。

月咬
 フィギィアが実物に!!!とかいうモデラーにとっては夢のようなシチュエーション(ホントか?)もさる事ながら、
 細かい描写がリアルで「そーそー単純な物ほどバランスが難しいんだよね〜」と納得してたりフィギィアの顔を鏡映してショックを受けたりと古傷がえぐられたりしてました(笑)
 その辺がしっかりしてるから形だけのネタ漫画で終わらずにちゃんと模型漫画としていいものになってます。あ〜また何か作りたくなってきた〜〜〜。

羽澄葵
 フィギュアを動かしてみたい、生きてるみたいなフィギュアを作ってみたいそんな願望を抱きながらフィギュアを作ってた頃を思い出しました。こういう願望をちゃんとテーマに出来ているのはとても感心させられます。
 とまあこういった御託はさておき、何も知らない女の子がおたく色に染め上がっていくのは大好きなシチュエーションです。純粋に心からオタクになろうとしてる(ちがうちがう)雛子ちゃんが健気で……あの真剣な眼差しを持ったままフィギュア道を極めて欲しいです。

 フィギュアに模型、ドールにトイ。立体ものは多種あるけれど趣味のお人形製作から急転直下!オタク向けフィギュアモデラーを目指す。
 雛子的には目標にむけて登っているつもりでも、読者的にはオタク道に堕ちていってるというギャップが面白い物語。
 ところで……いくらイベント会場とはいえナンパする目的でエロフィギュアを大量買いする人ってのはホントに居るのか誇張されたネタなのか、気になって夜も眠れない。

檸檬来夢
 この話、めずらしく一般人だった女の子が逸般人へと道を転がり落ちる物語。
 とはいえ、目的は人形愛みたいな部分があるので、一概にオタクになっていきます、という話ではない。フィギュアを作る上で原作のアニメをみてちゃんとポイントを抑えようとする様なんかは、やはり物を作る上では原作等への愛が必要不可欠であるという様を見せ付けられているようで非常に好感度が高い。私はフィギュアは作ったことは無いし、作れるとも思えないのだが、作れる人を尊敬する。手を出したらディープそうというのもあるが、食玩レベルで抑えておくのが自分のためでもあろう。
 裏表紙の立体になったドリーマーレイも必見ですね。

ワダツミ