アニメがお仕事!
#1


著者 石田敦子
出版社 少年画報社
掲載誌 ヤングキング
OURS
発行日 2004/10/01
定価 533円
オタク 2.86
パロディ 2.00
シリアス 4.36
ギャグ 1.75
痛さ 3.25
好きさ 3.88
「福山イチ乃は入社したてのド新人アニメーター。少し先輩の双子の弟・二太と一緒に夢を追い続ける毎日」
 アニメーター出身(マイトガインやジェイデッカーのキャラデザイナーと言えばわかる人も多い筈)の漫画家として有名な石田敦子さんの自伝的な部分も含めたフィクション作品。
 アニメがお仕事なわけですが、アニメに興味が無い人が読んでも十分楽しく、共感でき、心熱くなる青春漫画なんじゃないかなぁと思って止まないのですが、一般人に読ませたことがないのでなんともかんとも。
 よく「趣味を仕事にしてはいけない」って言葉を聞きますね。僕なんかは考え無しに「好きな事でお金貰えたら最高なのに」と思ってしまってたんですが、それはあくまで上手くいっていた場合。心の底から大好きな事で挫折し、適性が無いんじゃないかと思わされたら、それはとてつもない精神的ダメージになるって歳を経るにつれて知りました。
 そういったハードルを乗り越えた人だけが真のプロフェッショナルとして成長できるわけですが、この作品もそういった若い情熱と現実がぶつかり合い、とても良質な青春劇を展開しております。随所でキャラ達が口にする言霊に何度涙させられた事やら。楽しいよ、アニメ!
 ところで作中ではガンダムが結構大きな役回りを与えられ(一緒にファンをしてた仲間達から、その作品をバカにされる。オタなら結構同じような経験有るんじゃないかな)、時期的にもZガンダムが始まる直前の様な感じなんで80年代半ばかと思いきや、普通に携帯持ってたりと時代設定自体は現代なので、チグハグ感がちょっと面白い(笑)
 余談。アニメーターと言えば貧乏の代名詞なわけですが、ちと動画一枚描いて貰える金額を聞いたら、月八万だって稼ぐの大変だわって納得してしまったです。
 現代日本、いい若者が働き続けても生活に困るなんて事態はありえないわけですが、アニメーターは正に貧乏暇なし。
あおぼうず
 過酷なことで有名なアニメ業界のお話ですが、やはり過酷な環境にあれば人間の暗いところが出てくると言うもの。特殊な業種ですから一般人である親から文句が出るのも当然。アニメ仲間の友人達からいろいろ言われるのも当然。
 そんな中でトラブルが起こっても自分を正直に熱く語るニッくんはカッコイイし、素直にがんばるイチ乃を見ると胸がキュンとなります。夢を追うために頑張る二人を応援してやりたいです。
 それにしてもアニメ業界って本当にこんなに荒んでいるんでしょうかね。作者は元アニメーターらしいのですが、どのぐらいリアルに描かれているのでしょうか。

hidaka
 全ての“目指している人”必読の作品。
 誰しも見る“自分の好きな事でメシを食いたい”という夢。しかし殆どの人は現実という壁の前に挫折を余儀なくされる。主人公姉弟は夢のスタート地点に立ったばかり。世の中の辛い事汚い事を見せつけられ、挫けそうになるけど、でも、踏ん張る。この世界が何よりも好きだから。
 キャラは可愛いのにお話は胸にグサグサ突き刺さるような痛さという石田敦子作品テイストは健在。そして痛みの中で立ち上がった先に見える喜びを描くという姿勢も健在。
 一介のアニメ好きとして、また創造する側に行きたいと思っていた者として、作中の三鷹さんの台詞「楽しいね、アニメ」は心に響きます。自分のしている事を好きって言えるのは素晴らしいよね。

毛玉
 アニメーターへの夢を追いかける人の心にビル破壊用の鉄球をぶつけるかのような作品です。
 作中で描かれている事の全てが事実だとは思いたくないですが、業界の内情を知らない一般人にダメージを与えるには十分過ぎるリアルさで描かれていると思います。
 今までもアニメ業界の内情を題材にした作品は、各メディアで数多く存在しますが、ここまでシリアスに描ききっている作品は珍しいのではないでしょうか。
 アニメ制作現場という、やや特殊な舞台を背景にしてはいますが、個人の力では到底動かし得ない、巨大な腐敗した組織の中を、それでも一抹の希望を抱いて邁進していく兄妹の姿は、間違いなく青春漫画の様相を呈していると言えるでしょう。
「主人公が可愛い」というのはたぶん皆さん共通のコメントだと思うので敢えて言いません。
 ごめんなさいやっぱり言います。イチ乃可愛いよイチ乃。

ゴルゴ31
 作者自身のアニメ業界経験がよく出ている作品。職場を転職したアニメーターが元の職場から集団嫌がらせ電話を受けるシーンなど何も知らないと「そんな馬鹿な」と思ってしまうけど作者がアニメ業界を経験しているだけに真実と感じてしまいます。無論経験した話をそのまま描いているわけはないでしょうけど話の泥臭さにリアルを感じます。
 泥臭さを感じるという意味も含めてアニメ業界の真実やキツさが前面に出ている作品ですけどアニメーターとして頑張る姉と弟の真っ直ぐな生き方は熱さを感じさせて心地よく読ませてくれるので読んでいて辛いということは無いかと思います。

月咬
 痛さつらさをしっかりと捉えた上でアニメーターの仕事を描いてるので見ててつらくなるようなイタい部分もあるのですが、そんな中でも一生懸命アニメータやってる主人公が好感です。
 日本全国のアニメーターがんばれ〜♪

 目指したいものに向かって頑張って進んでいく主人公二人。
人間関係や技術の壁に正面からぶつかっていく姿がほほえましく勇気付けられます。
 元アニメ製作側の出身だけあって妙に細かく描きこまれた雰囲気の背景やちょうど読んでいて疑問に思ったところをうまくキャラが自然に解説をいれてくれているのが素人の読者に優しいつくりになっているのがお勧めの作品です。

檸檬来夢
 アニメータが主人公の漫画というと、島田ひろかずの「りてーく・ぐらふぃてぃ」が真っ先にでてくるのですが、この物語はあーぱー娘が主人公ではなく、男女二卵性の双子という妙な主人公になってます。
 実際にアニメーターの現場を見たことがないので、こういう現場なのかなぁとかこういう人が実際にも居るのかなぁとか、そういう想像を膨らませながらよみ進めています。オタのサークルなんかにも似たような人種が居るので、比較的安易に想像がつくところが苦笑せざるをえません。
 何にせよ、物を作る仕事についている人は尊敬に値します。
 普段アニメを見ていて、作画が作画がと言いますが、裏方では苦労もあるんだなァと、そんな感じを受け取れればいいのではないでしょうか?
 胸の下に毛玉ができる件では、やはり胸は小さい方がいいと再認識!

ワダツミ