聖王教会の最高意思決定機関「枢機卿団」の武門、教会騎士団を率いる騎士枢機卿。
たおやかな物腰と気品溢れる優美さは騎士というよりもお姫様のそれであり、文門を率いる司教枢機卿であった方が、第一印象により合致しているのかもしれない。
いや、初見に限らず会話を重ねた上でも、彼女が戦場で血に塗れて戦う姿は想像し難いだろう。
しかしながら彼女は紛れもなくベルカの騎士であり、かつて聖王教会に仇なした無数の存在へ神罰を代行した、百戦錬磨の聖女……もっとも敵対する側からしてみれば「魔女」であった。
無数……。そう、外見こそ年若い令嬢ではあるが、彼女は古代ベルカの時代から生き続けている。カリム・グラシアは聖王から直接の叙勲を受けた騎士の、最後の一人なのだ。
保有するレアスキル「裏死海文書」がもたらす未来予知能力は、対象が長時間・広範囲となるほどに漠然としたイメージとなっていくのだが、個人戦闘レベルの「極めて近く限定的な未来」ならば、常時発動による先読みが可能。
このスキルに頼らずとも超一級の戦闘力を持つゆえ、十全に駆使しての戦いは常に完勝。千を越える戦場で数多の高名な騎士・魔導師との戦いを経て、ただの一度も傷を負ったことがないとされる。
だがしかし。
ベルカ戦乱期に、とある地方領主が闇の書の力を背景に聖王へ叛乱を起こした。当然、聖王は精強をもってなる騎士団を鎮圧のために派遣。守護騎士ヴォルケンリッターとの死闘の末、全滅に近い損害を被りながらも闇の書の破壊に成功した……という歴史的事実が存在する。
そして騎士団を率いていた者の名はカリム・グラシアなのだ。果たして彼女が部下に大損害を被りながら……さらには「あのヴォルケンリッター」を相手に無傷を通せたかどうかは、疑問の余地があるといえよう。
余談だが、所有するアームドデバイスはティルフィングという名である。
ちなみに彼女が老いと無縁なのも、時の流れに作用する裏死海文書のもたらす力ゆえであり、今後も老衰は無いとされている。
これが女性垂涎な能力なのは言うまでもなく、聖王教会のスポークスマンとしての彼女に痺れて憧れ、聖王信仰がアンチエイジングに効果があるに違いないと踏んで入信する女性が後を絶たないらしい。あと豊胸とか。
無論、美人シスター(間違い)にゾッコンラヴな野郎共がまっしぐらなのは言うまでもない。
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