ギリギリまでふんばって
 アメリカ軍、沖縄での化物迎撃戦にて惨敗。
 自国領内が新型大量破壊兵器の実戦テスト場になることを許容したのも、それで間違いなく倒せると信じたからこそであり、市街地を犠牲にしたにも関らず多少足留めをしたに過ぎないのではお話にもならない。

 最後のN2爆弾による撃破失敗から二時間後、日本国政府は国民保護法を発動。
 九州沿岸部を中心に住民の避難を決定。なお、化物の過去の進行速度から計算した場合の九州南端到達時間は……約三十時間。
 陸海空自衛隊はこのあまりにも短い数字を一秒でも長く延長し、一人でも多くの国民を避難させる為、現地に展開可能な全戦力を遅延戦闘ですり潰す覚悟を完了。


「それじゃあ我ら日本人は世界でもっとも『こういった状況』に対するシミュレーション経験が豊富だってことを、怪獣に教えてやらんとな。ゴジラとウルトラマンで育った世代を舐めるなよ」
 そう言うなり暗い司令室から抜け出し、化物がいるであろう方角を睨みつけるゲンヤ。
「残念ながら自前の『切り札』は間に合わなかったが……スーパーヒーローがかけつけてくれるあたり、やっぱりここは日本だねぇ」